子どもと親権 第1話:妻と子どもがいなくなった日

執筆者: 

スー

結婚5年目、子どもが幼稚園に入ったころの違和感

結婚生活も5年目に入り、子どもが幼稚園に通い始めたころのことです。
子どもの成長を実感し、喜ばしい気持ちでいっぱいのころでした。

そんなころから、妻の様子に少しずつ違和感を覚えるようになりました。
携帯電話をこそこそ使うことが増え、電話をかけるときやメールをするときに、わざわざ別の部屋に移動するようになったのです。

それまで一緒にいるときに、そんなふうに携帯を扱う姿を見たことはありませんでした。
だからこそ、「これは明らかに何かおかしい」と感じたのを覚えています。

携帯のメールを見てしまい、問いただした日

最初は「仕事が忙しいのかもしれない」「たまたまかもしれない」と、自分に言い聞かせようとしました。
けれど、こそこそと携帯を持って別の部屋に行く様子が続き、不安はどんどん大きくなっていきました。

ある日、どうしてもその不安に耐えきれなくなった僕は、妻の携帯の画面に残っていたメールを見てしまいました。
そして、そのメッセージを見せながら、「このメール、どういうことなんだ?」と問いただしました。

そのとき、僕は妻にこうも聞きました。
「これからどうするつもりなんだ。別れるつもりなのか」

妻ははっきりした言葉は返さなかったものの、静かにうなずきました。
その様子を見た瞬間、胸の中で何かが大きな音を立てて崩れていくような感覚がありました。

「子どもを置いて出て行く」という言葉を聞いた瞬間

次に、僕が聞かずにはいられなかったのは、子どものことでした。
「じゃあ、子どもはどうするんだ」と問いかけました。

その問いに対して、妻から返ってきた言葉は、「置いて出て行きます」というものでした。

その一言を聞いたとき、胸の奥がぎゅっと締めつけられるような感覚になりました。
自分のことよりも、真っ先に頭に浮かんだのは、息子の顔でした。

「この子は、どう感じるんだろう」
「急にお母さんがいなくなったら、この子の心はどうなるんだろう」

子どもの気持ちを考えれば考えるほど、悲しさと怒りと信じられなさが一気に押し寄せてきました。

子どものことを思って感情が爆発した夜

そのときの僕は、正直、冷静ではいられませんでした。
子どものことを思うと、妻の「置いて出て行きます」という言葉を、どうしても受け入れられなかったからです。

感情のやり場がなくなった僕は、妻にこう求めてしまいました。
「今言ったことを、紙に書いてくれ」

妻は実際に、さきほど口にした内容を紙に書きました。
その紙を見ながら、僕は「子どもがかわいそうだろ。ふざけるなよ」と、強い言葉をぶつけてしまいました。

そのあとは、自分でも何をどう考えればいいのか分からず、ほとんど放心状態だったと思います。
妻も暗い表情のままで、その晩すぐに家を出て行くことはありませんでした。

その後の1か月と、出張中に起きたこと

その日を境に、家の中の空気は明らかに変わりました。
同じ家の中で生活は続いているのに、心の距離だけが遠くなっていくような感覚がありました。

表面上は、これまでどおりの生活を続けているように見えましたが、
「いつかこの家族は本当にバラバラになってしまうのかもしれない」という不安を、ずっと抱えたまま過ごしていました。

それからおよそ1か月ほどたったころ、僕は仕事の都合で、5日ほど家を空け出張に出ることになりました。
いつもどおり家を出たつもりでしたが、どこか胸の中に嫌な予感のようなものが残っていたのを覚えています。

出張を終えて家に戻ってきたとき、玄関の前で足が止まりました。
玄関には、家の鍵がぽつんと置かれていたのです。

中に入ると、妻と子どもの姿はどこにもありませんでした。

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子どもと親権第2話:行方不明という現実

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子どもと親権第4話:絶望的な思い